熊本市現代美術館 ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家

熊本県のイベント

2024年7月13日(土)~9月23日(月・振休) 
熊本県/熊本市(中央区)/熊本市現代美術館 ギャラリーI・II 

事の発端は2013年、スウェーデンに住むガラス作家の山野アンダーソン陽子のもとに、日本から一人のグラフィックデザイナーが訪ねてきたことでした。
「山野さんのガラスの作品を本にしたらどうか」と提案を受けたことをきっかけに、アートブックを制作する「Glass Tableware in Still Life(静物画の中のガラス食器)」というプロジェクトが始まります。

――どんなガラスの食器を描きたい?
山野はスウェーデン、日本、ドイツを拠点とする18人の画家に声をかけ、静物画に描きたいガラス食器を言葉でリクエストしてもらいました。リクエストの言葉に応じて、山野はクリアーのガラスを吹きます。
そして出来がったガラス食器をもとに画家は絵を描く。どんな絵でもいいので、絵のどこかに必ずガラスを入れることが条件です。

そうやって生まれたガラスの器と絵画は、アートブックとして編まれるべく、写真家によって撮影されました。
写真家は8×10の大判カメラを携えて、スウェーデン、ドイツ、日本を旅し、それぞれの画家のアトリエに佇むガラスの器と絵画のある世界をとらえていきました。

一冊のアートブックが結実するまでに、画家の言葉はガラスを生み、ガラスは絵を生み、ガラスと絵は写真を生みました。そしてここに展覧会が生まれ、そこから見る者たちの言葉を生むでしょう。展示室には、ガラス食器をめぐる作品とともに、作り手たちと見る者たちの生きている関係性が輝いています。

「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」フライヤー(表)

見どころ1.ガラス作家・山野アンダーソン陽子

ガラスに惹かれ、なかでもガラス食器という量産されたクラフトに関心を抱き、北欧最古のガラス工場であるコースタ内の学校で吹きガラスの手法を学ぶ。

ガラス産業が栄えたスウェーデンにおいて、17世紀より用いられてきた工場制手工業の手間ひまかかる技術にこだわり、制作を続けている。

同じものをつくっても手作業ゆえに一つひとつが微妙に異なり、それはちょうど私たちみんながそれぞれに違うことと似ていると、山野は考えます。

かたちのわずかな歪みや使い心地の微妙な違いなどのささやかな個性は、使い手との間にじわじわと生まれる「食器との関係性」を考えるきっかけになったといいます。

三部正博《伊庭靖子のアトリエに佇むガラス食器》2021

見どころ2.Glass Tableware in Still Lifeプロジェクト

グラフィックデザイナーの須山悠里から、自身のガラス食器にまつわる本を作らないかと提案されたことをきっかけに、アートブックを作る目的でこのプロジェクトは始まりました。

普段から静物画の中のガラスに目がいきやすく、割れやすい現実のガラスと、どうやっても割れることはなく、嘘でも成立してしまう絵画の中のガラスの「ズレ」を魅力として捉えていた山野。

自分の作ったガラスが絵に描かれた時、どんなズレや違いが生まれるのだろう?

そのような興味から、画家の言葉によるリクエストに合わせて山野がガラスを作り、それをもとに画家は絵を描く。

そのガラスと絵画を写真にして本として編む、というコンセプトに至ります。

デザイナーの須山、写真家の三部正博とともに、約5年の月日をかけて、「Glass Tableware in Still Life」は進行していきました。

木村彩子《Stem for pink / 7 May》2021

見どころ3.ガラス、写真、絵画の「関係性」を思う

アートブックを目指して進められたこのプロジェクトは、やがて展覧会へと導かれます。

会場に並ぶのは日々の暮らしでも使いやすそうなクリアーガラスの食器と、それらが多種多様な表現で描かれた絵画、画家のアトリエで撮影されたガラスの写真。

それぞれを作品として鑑賞しながら、生活の道具としての使い心地を想像することもできるでしょう。

また、美術館で鑑賞することと自宅で道具として使うこと(を想像すること)のあいだを行ったり来たりすることで、作品と道具、鑑賞することと使用すること、美術館と自宅、フィクションとリアルなどが混ざりあい、その境界が曖昧になっていくことでしょう。

それらが作品ジャンルを飛び越えて関係しあい、さらに見る人が関係することで、新たな関係性が紡がれることを期待します。

三部正博《伊庭靖子が描いた静物画〈untitled 2021‒15〉》2021(参考作品)

=関連イベント=
オープニングトーク
【日時】 7月13日(土)13:30~15:00
【登壇者】 山野アンダーソン陽子(ガラス作家)、三部正博(写真家)、須山悠里(グラフィックデザイナー)
【会場】 ホームギャラリー
【定員】 90名 *先着順
【参加費】 無料
ワークショップ 「目で見る、カメラで見る」
一眼レフデジタルカメラと4×5フィルムカメラを使って、モノクロームの「ガラスの器のある風景」を撮影します。自分の目、ファインダー越し、ピントグラス面を通しての3つの異なるとらえ方を体験し、「ものを見る」ことを深めていくワークショップです。
【日時】 7月28日(日)10:30~16:00
【講師】 三部正博(写真家/出品作家)
【会場】 キッズファクトリー(集合)、館内(撮影)
【参加費】 一人2,000円
【対象】 10歳以上 *どなたでも
【定員】 約10名 *事前申込制
*カメラ、モチーフは美術館が用意します。
*途中、各自で昼食をとっていただきます。弁当持参可。
*フィルム撮影した写真は、現像して後日ネガとコンタクトシートをお渡しします。
CAMKファミリーツアー
0~6歳の子どもと家族、友人の皆さんと一緒にゆっくりと展覧会を楽しむツアー。
ベビーカー、プレママやプレパパも歓迎します。
【日時】 7月15日(月・祝)10:30~11:30
【会場】 ギャラリーⅠ・Ⅱ
【定員】 7組 *事前申込制
【参加費】 展覧会観覧料(大人のみ)
一点じっくり鑑賞会
ファシリテーターと会話をしながら、じっくりと1つの作品を観てみましょう。
【日時】 8月11日(日)、8月24日(土)各回とも13:30~14:30
【会場】 ギャラリーⅠ・Ⅱ *直接会場にお越しください
【参加費】 展覧会観覧料
【開催時間】10:00~20:00(入場は19:30まで)
【休館日】火曜日
【観覧料】一般1,300円(1,100円)、シニア(65歳以上)1,000円(800円)、学生800円(600円)、中学生以下無料
*各種障害者手帳をご提示の方とその付き添い1名は無料
*( )は前売、20名以上の団体、電車・バス1日乗車券等を提示の料金
*前売券の販売は7月12日(金)まで

問合せ先:熊本市現代美術館 TEL 096-278-7500

詳細は・・熊本市現代美術館Webサイト

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